近年、マスコミでも話題になることが多い「不正受給」や「低所得者との逆転現象」などの問題を受け、昨年12月6日「生活保護法の一部を改正する法律案」が成立した。
この法律案における主な修正点は以下の5点である。
1.就労の自立を促すために「就労自立給付金」の創設
2.被保護者就労自立支援事業の創設
3.被保護者の健康管理や家計支援の取り組みの強化。
4.不正・不適正受給者対策の強化の一環として、申請時をふくめた福祉事務所の調査権限の強化(罰則と返還金、扶養義務者への報告)
5.医療扶助の適正化(指定医療機関の見直し、指導強化、後発医薬品の使用の促進)
1の就労自立給付金とは、「就労収入が増えると生活保護支給額が減る」「生活保護には税金や社会保険料が課されないため、就労し生活保護が廃止になった後に実質的な減収となる」という問題に対し、保護期間中に就労した場合の受給において、従来は生活保護費から差し引かれていた金額の一部を積み立て、生活保護が終了した時に一括で支給するという制度である。これにより生活保護受給者が保護を終える際に、ある程度のまとまった貯蓄を持って自立することができるようになる。
2,3は受給者の就労・自立を積極的に促すものであり、この法案と同時に成立した「生活困窮者自立支援法案」とともに、就労率を高め被保護者の減少を図っている。また、5の医療扶助の適正化は不正受給に加担した指定医療機関への対処の厳格化、ジェネリック医薬品使用の推進等が定められている。
上記5点の中で、最も争点となっているのは4の「不正・不適正受給者対策の強化」である。この項目では「保護申請時の申請書提出等の厳格化」「保護の開始、変更に対し扶養義務者に報告を求めることが出来るようにする」「不正受給があった場合、被保護者だけでなく、関わった就労自立支援機関などにも費用の返還請求および徴収金を課すことができる」といった内容が定められており、これにより不正受給の減少や支給基準の厳格化を図っている。
しかし、「ホームレス状態の人が申請に関する書類をしっかり揃えることは非常に困難」「夫のドメスティックバイオレンスから逃げてきた場合に扶養義務者への報告はより危険を伴う」など、生活保護を希望する人たちの実態を鑑みるに、申請の厳格化が「本来受給されるべき対象者に受給されない」という問題の深刻化を引き起こすという指摘もなされている。